5000打!

今この瞬間を目に焼きつけて

いつも朝目覚めて思うことがある。


「天兄、俺にも!俺にも稽古つけてくれっス!」
「じゃあもっと俺のことを誉めろ!崇めろ!」
「何言ってやがるこのクソ兄貴があああ!」
「はいはい、みんなそこまでにして。ご飯だから。」


なんでこの人達こんなにうるさ、ごほごほ!元気なんだろう。


□ ■ □


「みんなおはよー……。朝から元気いっぱいで羨ましいよ。」
「おはよう名前。……顔色悪いけど、大丈夫?」
「あー……、朝はいつもこんなんだよ……。」


低血圧なんだよね、とぼやく彼女。
低血圧に、あの三人の元気はさぞかし辛いだろう。


「少し待ってな。今水とってきてあげる。」
「うわあ、ありがとうママ……!」


ママ、母親。
そう言った彼女に苦笑いをこぼして自分の母親を思い浮かべた。
……自分たちのために死んでいってしまった美しく、立派な風魔。
少し感傷に浸りながらも水を手渡す。


「………どうしたの?」


目を逸らさずにずっと俺の瞳を見てくる名前。


「あの、」
「はあー、腹へった!飯にしよーぜ!」


名前の声は天火にかき消されてしまい、聞こえなくて。
彼女は空気を断ち切るかのように、ふわりと笑いながら


「天火おはよう。今日も朝から元気だねぇ。」
「おうよ!お前は逆に静かだな!」
「いつものことでしょうが。」


何事もないように、時間は進む。


□ ■ □


今日は日差しが暖かくて、とても心地よい。
一人でうとうとしていたら


「名前。」
「あ、白子。どったの?」
「あ、あー、あの、ね、」


およ?どもる白子なんて初めて見た。


「……朝、何言おうとしてたのか、気になって、」
「んー?朝?」


朝、朝……天火達が来る前に話してたことだよね。


「あ、思いだした。」
「何、言おうとしてたの?」


心なしか白子の顔が強ばっていて


「べ、別に大したことじゃないよ?」
「それでも。」


いつも余裕がなさそうな白子を見て


「………朝、にさ。水持ってきてくれたとき。白子、私がふざけて"ママ"って言ったら……少しだけ泣きそうな顔、してたから。」


彼のような人でも、あんな悲しそうな顔をするのか、と少し驚いた。
でも、もし、自分の言葉が彼をあのような顔にしてしまったなら、


「ごめん、なさい、」
「………ふはっ!」
「…え、?」


笑うところなんてないんですけど!と思いながら白子を見た。


「っ!」


すごく優しそうな笑顔で不覚にも心臓が跳ねる。


「ありがとね名前。大好き。」
「んなっ……!」


ぎゅううう、と抱き締められる。


「ちょ、ちょっと、白子!な、なんで抱き締めるの!」
「うーん、今俺すごく嬉しいからかな?」


はい!?と叫ばなかった自分を誰か誉めてほしい。
天火じゃないけど。
…悔しい、自分だけドキドキするなんて。
だから、



今この瞬間を目に焼きつけて



「私も、大好きですよ!」
「っ!(もうほんと反則…!)」


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